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オレがアメフトに興味を持ったのは中学生の頃だから、彼是10年以上前になる。最初の頃は、只管にボールがあるところを追っ掛けて観戦してたもんだ(つか今でも完全には直ってないが)。
だが次第に、広くフィールドを見回して観戦出来るようになって来た。すると、色んなものが見えるものだ。
面白いのは、WRとCBの対決。パスをレシーヴしようとするWRと、それを防ごうとするCB。華麗な空中戦と、そこに至るまでの熾烈な地上戦。
TV中継だと大抵の場合は、画面の外に切れていてリアルタイムで観ることは不可能。だが、たまに引きの画面でのシーンだったり、パスプレイのリプレイだったりで、その凄絶な勝負を観ることが出来る。
いやぁ、これは面白い。オリンピック級選手より遥かに優れたアスリート同士が、そこいらのタイマンスポーツより遥かに高いレベルのスキルのぶつけ合いをし、その辺の格闘技より遥かに緊張感のあるプレイで魅せてくれる。アメフトというチームスポーツにだが、1対1の対決が際立つマッチアップってのは、やっぱりこの両者がベストだな。
CBチャンプ・ベイリー、CBクリス・マカリスター、CBタイ・ロー、CBチャールズ・ウッドソン、CBサマリ・ロール等といった面々と、WRランディ・モス、WRマーヴィン・ハリソン、WRテレル・オーウェンズ、WRチャド・ジョンソン、WRムシン・ムハマド等といった面々の激突、これは本当に面白い。
高さ・パワー・スピード・アジリティ・ジャンプ力・テクニック・柔軟さ、極限まで高められた体力と技術の鬩ぎ合い、各々の思考・反応・先読み・対応力・駆け引き・経験、極限まで高められた息詰まる魂の勝負、観てるだけで興奮する。
それとは別になるが、もう1つ面白いマッチアップがある。それは、OTとDEの対決。パスを投げるQBを襲うDEと、そこに壁として立ち塞がるOT。
この勝負、前述のWR対CBよりは、スナップ位置に近いために観易い。だが、思わずボールを目で追ってしまうので視界から消えがちなのが難点だな(それは観る者が悪い)。
そのOT対DEの対決で、面白い試合があった。NFL2005シーズンweek6、S.L.Rams@Ind.Coltsの試合だ。RamsのLTは、言わずと知れたNFLにおけるNo.1オフェンスライン、LTオーランド・ペイス。対するColtsのREは、昨シーズンのサック王たるREドワイト・フリーニー。
前者は、201cm・147kgの巨体を誇りながら驚異の運動能力を持ち、圧倒的なリーチとパワーで絶対的な壁として君臨する、NFLきっての名選手。7年目だが過去6年連続してプロボウルに選出されており、将来の殿堂入りは間違い無いとされる選手。対する後者は、185cm・122kgとラインメンとしては常識外れなほどに小柄ながらも、信じ難いほどのスピードと低い姿勢からのタックルを武器に、新人年から3年連続2桁サックを記録して来た、稀代のサックアーティスト。
このマッチアップ、試合開始前から面白くなるのは目に見えている。当然、期待を込めて見守った。
結果。小柄なREフリーニーの前に巨漢のLTペイスが立ち塞がり、突進は巨体を活かして撥ね返し、片手で動きを封じつつ巧くコントロールし、仕事らしい仕事をさせないまま時間は過ぎて行った。途中のランプレイで、LTペイスのマークを外したREフリーニーがRamsのRBジャクソンに見事なタックルを喰らわしファンブルフォースを奪うシーンがあったが、全般にLTペイスの圧勝と云った雰囲気。終盤にREフリーニーがQBサックを奪ったが、これは勝敗の帰趨があらかた決してから。全体として、LTペイスの勝利は揺るがない。ゲーム自体はColtsの圧勝となったが、局地戦で見ればLTペイスvsREフリーニーはLTペイスの貫録勝ちと言ったところ。
凄いな、LTペイス。プロボウラーであるRavensのLTジョナサン・オグデンですら全く歯が立たなかったREフリーニーを、これほど封じ込むとは。「日本一のプレイヤーになる」と息巻いてた流川を、圧倒的な実力差で叩き潰した沢北栄治みたいだ(だとするとLTオグデンは清田信長辺りか?)。
兎にも角にも、大きなNFLシーズンの舞台の、その1/16である1試合の、その何十分の一かの1プレイの、その一部分である局地的な1対1の対決にも、色々と楽しい見所は詰まっている、そんなNFLが面白いのです。