NFL - スーパーボウル レビュー

 6日18時半(日本時間7日早朝8時半)にサンディエゴにて、第39回スーパーボウルが開催された。



 では早速、ゲームレビューへ。



 −1stQ−



 コイントスに勝ち、最初の攻撃権を得たのはPhi.Eagles

 Eaglesは、試合最初の攻撃ドライヴで、いきなり2プレイ連続してQBドノヴァン・マクナブからWRテレル・オーウェンズへのパスを選択する。開幕前は出場さえ危ぶまれており、復帰出来ても先発出場は無理と言われていたWRオーウェンズ。彼を敢えて使う事で、この試合に賭けるEaglesの執念を感じるプレイだ。

 だがこの時点で、Patriotsの奇策が明らかとなる。スクランブル能力に長けたQBマクナブを警戒し、LBを通常の4人に加えLBローズヴェルト・コルヴィンを投入し、ラインは僅か2人という、2−5ディフェンスを敷いていた。ランは2人のラインでも充分に止められるから、それよりもスクランブルを抑え、積極的なブリッツでQBマクナブにプレッシャーを与え続けようという作戦。

 3rdDOWN-3ydsからのプレイで、これが見事に奏功する。QBマクナブがPatriotsのLBテディ・ブルスキにサックを喰らい、更にLBウィリー・マッギネストにボールをはたかれてファンブルを犯してしまうのだ。この判定はEaglesのチャレンジで覆った(ファンブルの前にダウンしていた)が、結局パントに終わる。

QBマクナブをサックするLBブルスキ。

 一方のPatriotsの攻撃は、最初のプレイでQBトム・ブレイディからWRディオン・ブランチへの16ydsパスがヒットするも、その後の攻撃で前進出来ず、こちらもパント。何とも重苦しい立ち上がり。

 両チーム2回目のドライヴも、1stDOWNを更新出来ずパントに。両チーム共に守備力には自信を持っているが、此処まで完全に膠着状態に陥っている。



 だが、Eagles3回目のドライヴは、大荒れに。

 先ずは、TEのL.J.スミスがスーパーキャッチで1stDOWN更新に成功。続いて、QBマクナブからWRオーウェンズへのパスがヒット、ランアフターキャッチでずば抜けた身体能力を見せ付け、30ydsのビッグゲインに繋げる。更にPatriotsのLBローズヴェルト・コルヴィンの反則も重なり、一気に39ydsを前進。Patriotsゴールまで8ydsと迫り、先制のチャンスを得る。

CBゲイを振り切りパスレシーヴを決めるWRオーウェンズ

 だが此処でPatriots守備陣が踏ん張る。次のプレイで、LBマイク・ブレイヴルがQBマクナブをサック、16ydsを押し戻す。続いて、QBマクナブがタッチダウンを狙ったWRオーウェンズへのパスをCBアサンテ・サミュエルがインターセプト、32ydsのリターン。だがこのプレイでLBローマン・ファイファーが反則を犯しており、インターセプトは無効に。

 ターンオーバーかと思われたプレイをふいにしたPatriotsだったが、QBマクナブが今度はRBウェストブルックを狙ったパスを、SSロドニー・ハリソンがインターセプト。今度は反則も無く、正真正銘のターンオーバー。攻撃権はPatriotsに移り、Eaglesは絶好の先制機を失う。此処で光ったのは、ベテランSSハリソンの洞察力の鋭さ。パスインターフェアランスの反則を狙ったEaglesを読み切っていた。もう流石としか言いようが無い。

パスをインターセプトするSSハリソン



 攻撃権を奪ったPatriotsだが、3回目攻撃もまたもやパントに。Patriotsは自陣を抜け出す事すら出来ない。

 一方のEaglesは、QBマクナブからのパスを受けたTEスミスがCBランドール・ゲイのハードタックルでファンブルを犯し、またもターンオーバー。このプレイ、わざとTEスミスのカバーを甘くし、その分だけ他のWRやRBをタイトにマーク、TEスミス以外にパスを投げられない(加えてブリッツが入っておりQBマクナブのスクランブルには出られない)状態にしておき、TEスミスにボールが渡った瞬間にCBゲイとFSユージン・ウィルソン、SSハリソンの3名が取り囲んで狙いすました強烈なタックルを見舞う、一種のトラッププレイ。Patriotsのコーチングの的確さが光った。



 ターンオーバーを連発し自滅しているEagles、攻撃が全く機能しないPatriots。両軍守備陣の奮闘もあり、0−0のまま、試合は最初の1/4を終える。



 −2ndQ−



 Patriots4回目のドライヴはまたも3-&-OUTでパントに。やはり、Eagles陣内への進入は果たせない。



 ここまで凍り付いていたスコアボードが、Eagles5回目のドライヴ、漸く変化を刻む。

 QBマクナブがWRトッド・ピンクストンへのパスを、17yds、40ydsと連続してヒット。WRオーウェンズの存在感と脅威のためにマークが引き付けられ、出来たスペースをWRピンクストンが効果的に利用した形。RBウェストブルックのランも効果的に働き、一気にPatriots陣6ydsまで迫る。ゴール前でランとパスを1回ずつ止められ、「流石は土壇場に強いPatriots守備陣、易々とは点を獲られないなぁ」と思っていると、3プレイ目でQBマクナブからTEスミスへのパスがヒット!見事にタッチダウンEaglesが7点を先制する。

先制点を挙げ指を突き上げ喜ぶQBマクナブ

 Patriotsが先制点を許したのは、既にプレイオフ出場を決めていたweek17の49ers戦のみ。それ以外は、レギュラーシーズンの15試合、プレイオフの2試合、全て先制しリードを保ち逃げ切って、勝利に結び付けて来た。そのPatriotsが先制され、これはひょっとするとEaglesもイケるかと思っていたら。



 次のPatriotsの攻撃。QBブレイディからRBディロンへのスクリーンパスが2回連続してコールされ、しかも連続ヒット。ブリッツを多用するEagles守備の弱点を見事に衝くプレイ。RBケヴィン・フォークの左右へのランも次々に決まり、4プレイで42ydsを前進。

 と思ったら、次のプレイでパスを受けたWRディヴィッド・ギヴンズが、まさかのファンブルEaglesのCBシェルドン・ブラウンにリカバーされ、こちらもターンオーバー。

 と思ったら、こちらの判定もPatriotsのチャンレンジでひっくり返り、パス成功に。

 そして、此処まで4回17ydsと沈黙していた野獣、RBディロンが、遂にその牙を剥く。左のオフタックルから、驚異の25ydsラン。一気にEaglesゴール前7ydsまで迫る。同点のチャンス。流石は王者だ、獲られたら獲り返す。

 と思ったら、ゴール前4ydsからの攻撃でQBブレイディがプレイアクションのミスファンブルしてDTダーウィン・ウォーカーにリカバーされる。今度こそターンオーバー。

ファンブルしターンオーバーを喫するQBブレイディ

 これまでのPatriotsなら、こんな大事な場面でのミスなんか無かった。やはりEaglesイケるか。



 しかしながら、Eaglesは3回の攻撃で全く前進出来ず逆に1ydsを後退、パントに終わる。こーゆー処でしっかり点に結び付けて行ければ、勝利も自ずと手に入るのにな。

 しかも、EaglesのPジョンソンのパントが29ydsとミスキックに終わり、敵陣37ydsと絶好の位置からの攻撃をPatriotsに与えてしまう。こんなつまらないミスを、王者Patriotsが見逃す筈も無い。と思ったら、案の定。

 このチャンスに、PatriotsはQBブレイディが異常に早いタイミングのショートパスをまたも連続成功させ、最後はWRギヴンズへの4ydsTDパスがヒット。Patriotsが同点に追い付く。

サイドライン際でTDパスレシーヴを決めるWRギヴンズ

 直前のドライヴでファンブルを犯していながら、全く冷静さを失わないQBブレイディの精神的な強さには、本当に感服する。



 次のEaglesの攻撃はセンターラインを越えるのが精一杯で時間切れ、前半を終える。

QBマクナブに強烈なプレッシャーを掛けるDEシーモア





 前半の成績を見てみる。此処まで7-7の同点。総獲得距離はPatriotsの148ydsに対しEaglesが178yds、1stDOWN更新回数9-11、ターンオーバーが1-2、ボール保持時間は15分13秒-14分17秒、まずは互角と言って良いだろう。

 異なるのは、両QBのパス成績。PatriotsのQBブレイディが13/17、107yds、1TD/0INTと堅実なプレイぶりを見せているのに対し、EaglesのQBマクナブは12/22、1TD/1INTと不安定。但しマクナブは、所々でロングパスをヒットさせ、獲得距離は168ydsとブレイディを大きく上回る。

 そーいやPatriotsは、WRパッテンがまだ1度もパスキャッチ出来ていない。マークがキツいのか。チーム唯一と言っても良いディープターゲットだが、後半何処かで彼を狙ったロングパスが飛び出すのであろうか?

 Eaglesは、RBウェストブルックのランが完全に不発。前半最後のプレイでPatriotsが引いて守った22ydsランの分を除くと、9回のランで僅か14ydsの獲得。これでは余りにもキツい。加えて、前半活躍したWRピンクストンが脚を攣って退場。Eaglesの攻撃の選択肢が狭まってしまう。





 −3rdQ−



 ハーフタイムショーを終え、後半が開始される。



 Patriotsは後半最初のドライヴで、QBブレイディからWRブランチへのパスが、8yds、27yds、15yds、21ydsと立て続けにヒット。ゴール前2ydsに迫る。

 此処で、早くもPatriotsはゴール前オフェンスでの切り札を投入する。本来は守備のプレイヤーである、LBブレイヴルのTEとしての投入である。体格、パワー、瞬発力、パスレシーヴに優れた彼は、昨年のスーパーボウルでもTDレシーヴを記録している。彼のパワーはCBやSでは対抗出来ないし、ラインのスピードでは付いて行けない。此処でのPatriotsのプレイコールは、ブレイヴルのパワーを活かしたライン戦で穴を開いてラン突破か、それともブレイヴルへのパスか、はたまた彼がマークを惹き付けて他の選手へのパスか。

 Patriotsの選択は、ブレイヴルへのパス。これをブレイヴルは難なくキャッチし、2ydsTDパスが決まる。遂に王者Patriotsが14-7と逆転に成功する。

TEの位置に入りTDパスをレシーヴするLBブレイヴル



 その後、両チーム1回ずつパントに終わり、後半2回目のEaglesのドライヴ。

 EaglesはWRオーウェンズへのパス等でジワジワと前進を続け、最後はRBウェストブルックへの10ydsTDパスで14-14の同点に追い付く。ウェストブルックはこのドライヴで、ラン2回11yds、パスレシーヴ2回25ydsと活躍。4ydsレシーヴを決めたプレイなんか、ターンボールをワンハンドキャッチだ。こんな事、WRでも簡単には出来ない。RBなのにWR以上のレシーヴ力。此処に来てラン突破も調子を上げて来て、必要な時に必要なだけ距離を稼ぎ、2回の1stDOWN更新を果たした。彼が調子に乗って来ると、Eaglesの攻撃も勢い付く。

同点のTDを挙げるRBウェストブルック



 再びリードを奪いたいPatriotsの攻撃。またもQBブレイディのショートパスが連続ヒット。シメジが不安要素として指摘したEaglesの守備セカンダリー陣が、やはり対応し切れていない印象。パスカバーに気を取られていると、RBディロンとRBフォークのランを止め切れず、慌ててラン守備に偏重になるとまたパス、最後はRBディロンの2ydsTDラン。昨年までは弱小チームのCin.Bengalsに所属し、7年間で1度もプレイオフに出場出来なかった彼は、思いのたけをぶつけるよにエンドゾーンに必死に身体を伸ばし、タッチダウンをもぎ取った。21-14と再び7点差。

身体を伸ばしエンドゾーンを陥れるRBディロン

 Eaglesの守備はアジャストが拙く、後手後手に回っている。ターンオーバーを奪える気がしない。

 このPatriotsのドライヴの間に3rdQも終わり、残すは最終4thQの15分間のみ。Eaglesは同点に出来るか。Patriotsは逃げ切れるか、若しくは突き放せるか。



 −4thQ−



 何としてでも早い時間帯に同点としたいEaglesの攻撃だが、全く噛み合わない。1ydsも前進出来ず、パントに。



 Eaglesは、守備も焦りが見える。QBブレイディからWRブランチへの19ydsパスを許したばかりか、このプレイでDTコーリー・サイモンがレシーヴ妨害の反則を犯し更に15ydsの罰退。更にRBディロンの2回のランで、ゴール前4ydsまで攻め込まれる。

CBブラウンと競り合いながらもパスをキャッチするWRブランチ

 だが、此処でEaglesは執念を見せる。FBパトリック・パスのランをノーゲインに抑えると、QBブレイディのパスを防ぎ、RBディロンを止め、タッチダウンを許さない。FGで3点を奪われ10点差とされてはしまったが、一縷の望みを繋ぐ粘りの守備だった。

結果的に決勝点となったKヴィナティエリのFG



 守備が頑張れば、攻撃も頑張らない訳には行かない。残り8分半で10点差なら、充分に追い付き追い抜ける。

 反撃のドライヴの2プレイ目、QBマクナブからWRオーウェンズへの36ydsパスがヒット。やはり千両役者、ここぞと言う場面でやってくれる。

 ……と思ったら、次のプレイでTEスミスを狙ったパスが、LBブルスキにインターセプトされる。何で其処に放るかなぁってくらいに、ノーマークだった他の選手では無くきっちりとマークされていたTEスミスへ。痛恨のターンオーバー、これでPatriotsの勝利が一気に近付いた。フィラデルフィアのファン達も、溜め息をついたに違いない。オレ自身、Eaglesのファンでは無いが溜め息をついた。

インターセプトを決め喜ぶLBブルスキ



 残り7分半、10点差。Patriotsとしては、ターンオーバーにだけ気を付けながら時間を消費して行けば良い。だが、RBディロンのランもWRギヴンズへのパスも止められ、3-and-outでパントに。ドライヴ維持時間は僅かに100秒と時間を消費出来ないまま、Eaglesの攻撃へ。Eagles守備陣、此処でも踏ん張った。



 残り5分40秒からの次のEaglesのドライヴでも、WRオーウェンズが輝きを見せる。5ydsレシーヴ、10ydsレシーヴと、2度に渡り1stDOWNを更新するプレイを決める。脚は痛いはずなのに、本来のスピードも失っているはずなのに、何故これだけの活躍を出来るのだろう。スターとはかくあるものなのか。

 そして残り1分48秒、ショットガン隊形でのQBマクナブからWRルイスへの30ydsパスがヒット!3点差とし、逆転勝利への希望が繋がる。

3点差に迫るTDパスをレシーヴするWRルイス

 だが問題は、このドライヴで4分近くも消費してしまった事。パス攻撃を中心に攻めるのはセオリー通りだが、レシーヴァーがサイドラインに逃げる事が出来ずにフィールド内で掴まり、時計を止められなかったのが大きい。PatriotsのLB陣の集中力が凄まじい。特にMLBブルスキは、サイズは無いのに身体が大きく見えるくらい存在感が有る。

 そして何より、何故にノーハドルオフェンスを展開しなかったのか。素人目にも、このドライヴはプレイが遅過ぎだ。TDを挙げて更にオンサイドキックにも成功したならば、この時間消費は寧ろプラスに出る。だが、そんな可能性は非常に低い。ならば、せめて3分残し、守備陣がPatriotsの攻撃を3-&-OUTに抑え、タイムアウトを上手く使って2分余りを自分達の攻撃時間とし、逆転のTDは難しくともせめて同点のFGは狙える余裕を持つべきだった。確かに、ノーハドルのハリーオフェンスでは、このドライヴでのTDは無かったかも知れない。だが、最終的に敗戦であるのならば、TDを挙げる挙げないなど全く無意味だ。勝利に繋がるプレイに徹するべきだ。

 斯くしてEaglesは、オンサイドキックに挑まねばならない状況に追い込まれた。



 次のEaglesのキックオフでのオンサイドキックが、事実上勝敗を決するプレイ。Patriotsがボールを奪えば、残り時間から見ても勝利はほぼ確定。Eaglesが押さえれば、FGで同点、TDで逆転を狙える。

 運命のキックオフ。Kディヴィット・エイカーズの右足に全てが懸かる。

 しかし、ボールは余りにも真正面に正直に転がる。ボールを押さえたのは、PatriotsのTEフォーリエイ。Eaglesは攻撃権を維持する事が出来ない。



 残り時間も僅か。当然、Patriotsはランを中心に時間を消費に掛かる。Eaglesタイムアウトで時計を止める。RBフォークが2回のラン、Eaglesが2回のタイムアウトをコール。残り1分39秒、Patriotsは三たびRBフォークのラン。タイムアウトは全て使い果たしてしまっているEaglesは、時間が過ぎて行くのを黙って見詰めるしか無い。プレイリスタートのリミットで、Patriotsは余裕のタイムアウトをコール。限界まで時間を消費する意図が見える。勝利にとことんまで拘っている。

 前進は出来ずパントになったものの、PatriotsのPミラーパントがまた、素晴らしい。巧みなボールコントロールで、Eaglesエンドゾーンまで僅か4ydsの位置でボールをデッドとした。これで、Eaglesネクストオフェンスでは96ydsものロングドライヴを維持する必要が生じた。



 Eaglesは、最後の攻撃へ。残り46秒、自陣4ydsからのドライヴ。

 QBマクナブは、RBウェストブルックへのパスを投じるも、僅か1ydsの前進。更に、フィールド内でダウンとなり、時計の進行は止まらない。

 ウェストブルックは、このパスは捕ってはならなかった。わざと落とすか、せめてサイドライン外に逃げねばならない。後者が不可能な状況ならば、落球もチームプレイだ。野球で最終回同点の一死三塁とかの状況で、大きなフライがファウルゾーンに飛んだ時、タッチアップで三塁走者がホームインすると判断したら、守備選手はわざとでもボールを落とさねばならない。そんなプレイに似ている。

 WRオーウェンズを狙ったパスも阻まれ、3rd-&-9ydsで残り時間は22秒。ボールは自陣5yds。

 起死回生を掛けて、QBマクナブがはWRスミスに投じたパスは、悪夢の如くSSロドニー・ハリソンの手中に納まる。まさかのインターセプト。劇的な幕切れ。

インターセプトで勝利を確定させ喜ぶSSハリソン等



 QBブレイディは、静かにニーダウン。時計は遂に残り0秒を刻み、激戦に終止符が打たれた。



N.E.Patriots 24−21 Phi.Eagles



勝利を決め祝福のゲータレードシャワーを浴びるHCベリチック



試合を終えお互いを讃え合う両雄QBブレイディとQBマクナブ



ロンバルディトロフィを手にし喜ぶLBブルスキ



スーパーボウルMVPに輝いたWRブランチ





 個人スタッツを見てみる。



 先ずは、パス攻撃。

 PatriotsのQBブレイディが23/33、236yds、2TD/0INT、レイティング110.2。3度目のスーパーボウルMVPは成らなかったが、過去2回のプレイと比較しても全く遜色無い。何と言っても安定感が素晴らしい。ミスを犯す気がしなかった。

 一方のEaglesのQBマクナブは、30/51、357yds、3TD/3INT、レイティング75.4。パス攻撃の回数が多いので距離も稼いでいるが、ミスも目立った。何よりも、3個のインターセプトがあまりにも痛過ぎた。これが2TD/2INTとかなら、或いは勝敗は逆になっていたかも知れない。

 ただ、QBマクナブについては、後日談ではあるが、とある情報を目にした。実はこの試合、風邪を引いて高熱があったのと言うのだ。しかも試合終盤では酷い脱水症状を起こしており、プレイコールすら満足に出来ず、WRフレディ・ミッチェルが伝達する事で攻撃を維持していたらしい。それでは4thQではノーハドルオフェンスなんか出来よう筈も無い。つか、そんなんなら、QBジェフ・ブレイクやQBコイ・デトマーなんかの実績も充分なバックアップQBを使うべきでは?WRオーウェンズが万全では無いだけに、QBマクナブに頼るしか無いのも解るが、せめてあのドライヴだけでも、控え選手で行くしか無かったのでは?どーなんだよ、HCアンディ・リードよ。





 続いて、ラン攻撃。

 Patriotsは、RBディロンが18回75yds、1TDと活躍。昨年までのエースRBフォークも、8回38ydsを稼いだ上に、効果的に時計を進める好プレイを見せた。

 対するEaglesは、RBウェストブルックが15回44yds、0TDと完全に沈黙。アベレージ3yds未満では、ラン攻撃を組み立てられる筈も無い。大体、Patriotsに2−5体型の守備を敷かれる時点で、Eaglesのラン攻撃は完全にナメられている訳だ。通常の3人または4人の守備ラインは要らない、2人で充分だ、そう罵倒されている訳だ。それで奮起してRBウェストブルックが150ydsランとかしてれば、Patriotsも為す術が無かったに違いないが、それが出来ないのがRBウェストブルックなんだよなぁ、ランでは二流なんだよなぁ。

 更に、スクランブル能力も高く買われている(というか寧ろ、昨年までは二流パッサー&一流スクランブラーとして評価されていた)QBマクナブのランは、僅か1回、ノーゲインに終わった。Patriots守備陣が巧みに包囲網を築いたのが大きい。



 次は、パスレシーヴ。

 此処で先ず紹介すべきは、今回のスーパーボウルで史上タイ記録となる捕球数を荒稼ぎし、スーパーボウルMVPにも輝いた、PatriotsのWRディオン・ブランチ。TDこそ無かったが、11回133ydsと大爆発した。レギュラーシーズンこそ負傷欠場もあり満足の行く結果を残せなかったが、大一番でのこの活躍は見事だった。Patriotsのパスレシーヴでは、WRブランチの次の捕球数がRBディロンとWRギヴンズの3回、如何にWRブランチにボールを集めていたか、そしてEagles守備陣が彼をカバーし切れなかったかが窺える。

 一方のEaglesでは、やはりと言うかWRテレル・オーウェンズの活躍が光る。9回122ydsはいずれもチーム最多。やはりWRピンクストン(4回82yds)やWRミッチェル(1回11yds)とは格が違う。7週間前に足首の手術を受けたばかりでまだボルトも入っており、ドクターストップまで掛かっていた状態で、この活躍。脚の状態が万全だったら、何処まで怪物ぶりを見せてくれていたのだろうか。



 更に、守備を見てみる。

 Patriotsでは、SSハリソンが7タックル、1QBサック、2INTと大暴れ。LBブルスキは、6タックル、1QBサック、1INTとこちらも暴れまくり。このどちらも、MVPを獲得して不思議では無かった。記録に残らない部分でも、縦横無尽に駆け回ってEaglesの攻撃を完封していた。あと、LBブレイヴルは、攻撃でのTDのみならず本職の守備でも2タックル、1QBサックと存在感を見せた。CBランドール・ゲイの10タックルはWRオーウェンズにかき回されたからとしても、その全てが前半で記録された事を考えると、ちょっと驚きだ。

 Eaglesは、FSマイケル・ルイスの5タックルを筆頭に、総じて良く頑張っていたと思う。だが、ブリッツを多用した結果、PatriotsのQBブレイディにスクリーンパスを投じるスペースを与えてしまった事と、守備セカンダリー陣のPatriotsWRブランチに対するマークが甘かった事が、敗戦に直結してしまった。





 シメジ予想との比較は、予想が願望過半だったので、勘弁して欲しい。まぁ、勝敗を含めて、外れだったし。





 はてさて、総括。

 今年のスーパーボウルは、試合が終盤までもつれる接戦だった事もあり、非常に面白かった。活躍すべき選手がきっちりと結果を残したのも大きい。欲を言えば、EaglesのQBドノヴァン・マクナブには、万全の体調でこの舞台に立って欲しかった。あの驚異的な身体能力を活かしてスクランブルを繰り出して欲しかった。

 何はともあれ、これでN.E.Patriotsは、21世紀になってからのこの4年間で3度目のNFL王者となった。これは、90年代にQBトロイ・エイクマン、RBエミット・スミス、WRマイケル・アーヴィンの「トリプレッツ」を筆頭とする豪華タレントを擁し一時代を築いたDal.Cowboysと並ぶ、快挙である。「Patriots
Dynasty(王朝)」との声も高い。あとは、NFLの過去39回のスーパーボウルにおいて、未だどのチームも成し遂げていない、スーパーボウル3連覇の偉業に挑むのみである。

 3連覇に挑むPatriots、雪辱に燃えるEagles、両チームにとって、来年もこの大舞台に戻って来るかどうかの鍵は、やはり現在の戦力をどれだけ維持し、更に高めて行けるか。

 FAについては、Patriotsは元々個々のタレントに拘らず限られた選手の中での組織力で勝負するチームだけに、さほど問題は無い。WRディヴィット・パッテン、Kアダム・ヴィナティエリ辺りが無制限FAとなるが、まぁ何とでもなる。Eaglesは、守備にFA選手が多い。DTコーリー・サイモン、DEヒュー・ダグラス、LBジェレマイア・トロッター等だ。あと忘れてはいけないのが、制限付きながらFA権を獲得したRBブライアン・ウェストブルック。この辺りを、しっかりと繋ぎ止めたい。

 あと、ドラフトやFAでの戦力増強。Patriotsは、この上で更にスターWRなんかを手に入れたら、もう手が付けられないが、まずは守備セカンダリーが先決だろう。CBタイ・ロー、CBタイロン・プール、CBアサンテ・サミュエルと故障が相次いだ今季は結局、本来WRのトロイ・ブラウンが最後までCBを勤める有様だった。この穴を埋めなければ、来季は厳しい。Eaglesは、攻撃ラインが問題。このスーパーボウルでも、ラインが持たない為にQBマクナブがプレッシャーに晒され続けたし、ラン攻撃はちっとも機能しなかった。能力の高いGが欲しいところだ。

 まぁどうやっても、来年のデトロイトでの第40回スーパーボウルは、我がAtl.FalconsとPit.Steelersの対戦で決定しているのだが。





 最後に、N.E.Patriotsの見事な勝利に、心より賛辞を送りたい。そして、有給休暇を下さった所長に、謝意を表したい。



ロンバルディトロフィを高く掲げるQBブレイディ