カニクリームコロッケと精米機と小銭とコットレル雰囲気のドラッグ効果による転位強化。

 先述の通り、本日は誕生日だった訳だが。

 丁度金曜日と重なった事もあり、本日は呑みに行くものだと思い込んでいた。別にオレを祝って呑み会を開いてくれる訳では無くても、誕生日を先輩たちと共に明るく過ごせるなら、それも良いかな、そう思っていた。

 だが、異様に忙しい今週の仕事は、辺境の防人にとって唯一の楽しみである、週末の呑み会までも奪って行った。



 23時頃、漸く家路に就く。田舎のスーパーはとうに閉店している時間なので、コンビニに寄って晩飯の買出し。折角の誕生日なので、カニクリームコロッケを購入。折角の誕生日なので、安物の発泡酒では無くサントリー・モルツを購入。

 レジに向かうと、しょっちゅう行っているのにお初にお目に掛かる若い女性店員。シメジの買物籠の中身をピピピとレジ打ちする。

 と、カニクリームコロッケとエビカツを入れたプラ製透明パックを、エビカツのみで勘定している。明らかにカニクリームコロッケの分が値段に入っていない。



 これは一体、どういう事だろう。

 オレを試しているのだろうか。先日、米の自動精米機で100円で袋1つ分の精米をしたら、釣り銭のところに何故か300円入っていて、あぁ有難やぁッとネコババした事を知っているとでも言うのだろうか?

 若しくは、この女性は何処からかオレの誕生日が今日だと知り、好物のカニクリームコロッケはささやかなプレゼントだと、サービスしてくれたのだろうか?

 それとも、この女性がオレにあろうことか一目惚れしてしまい、会話のきっかけにと故意にレジ打ちを間違ったのだろうか?

 はたまた、オレがカニクリームコロッケをパックに入れたと思った事自体がオレの勘違いで、実はエビカツだけしか入っていなかったのだろうか。オレはそんなに疲れていたのだろうか?



 ……単にカニクリームコロッケが目に入っていない、一杯一杯の新米アルバイトでした。