郵便貯金は全国何処ででも貯金を引き下ろせるから銀行より便利だよね」とアピールする事で贖罪を図る雑記

 毎月給料日に、前月分の呑み代や弁当代、お茶や珈琲の積立金、労働組合の組合費を支払うイヴェントがある。全員の支払い金額を計算し、徴収し、ツケをそれぞれに支払うのは、面倒なので下っ端の仕事だ。今月は、数ヶ月前からこの任務を押し付けたF新兵が不在だった。よって、シメジがやる事になった。



 昼休みに集金し、郵便局でカネを振り込まねばならない。時計を見ると、昼休みは残り20分。昼イチで検査が入っているから、急がねばならない。ついでに財布の中が少々寂しくなって来ているので、郵便貯金も下ろして来よう。

 郵便局に着いて、2台並んだATMの右側、振込用紙での振込が可能な方の機械の前に立つ。ピピピと慣れた手つきで操作、組合費を振り込む。ついでに、周囲は人が居ないようなので、左側の機械も同時進行で操作し、カードを挿入し貯金を下ろす。1万円札ばっかだと使い辛いので、千円札9枚になるよう、¥39,000を下ろす。振り込み作業は終わり、あとは左側の貯金引き落としだけ。

 ATMコーナーの自動ドアが開き、人が入って来た。良かった、振込みが先に終わってて。見ると、農水省の小役人、まはらさんだった。まはらさんと会話しつつ、カードを取り、利用明細を取り、挨拶して郵便局を出る。

 事務所に戻り時計を見ると、既に12時55分。支払い先ごとに集めたカネを振り分け、よしっ、収支がピッタリ合った(先月は¥20ズレたのでシメジが被った)。ハッ、もう13時だ、検査に行かねば。



 検査を終え事務所に戻ると、机の上には何かメモが。「郵便局の○○さんから電話がありました」。何だろうと思いつつ携帯を見ると、町内の局番からの不在着信が3件も。更に何故か、地元の役場らしき番号(市外局番が地元で最後4桁が「1111」)からも掛かって来ている。

 ハッΣ(゜ロ゜〃)!!!!

 恐る恐る財布を覗き込む。Σ( ̄□ ̄ll)ガーン やっぱり、下ろした筈の¥39,000が入っていない。しまった、下ろしたカネを取らず、そのまま郵便局を出てしまったようだ。カ、カードは……。(^。^;)ホッ、こっちは大丈夫だ。

 思い出してみる。左側の機械にカードを入れ、暗証番号と金額を入力する。右側の機械で振込みが終わる。利用明細を取る。左側の機械にカードと利用明細と¥39,000が出て来る。まはらさんに気付く。左側の機械からカードと明細を取る。まはらさんと話す。まはらさんも今日は給料日、カネを下ろすようだ。まはらさんとまた話す。一緒に郵便局を出る。

 ……カネ取ってない_| ̄|○

 やっぱり、2台同時にATMを使ったり、人と話しながら他の事をしようとすると、何か大事な事を忘れてしまったりするものなんだなぁ。



 シメジの¥39,000が残されたATMは、20秒経過してカネが取り出されなかった為にシャットされ、郵便局奥のブザーが鳴ったらしい。そんなシステムだったとは、知らんかった。直前に使用したカードから、シメジの実家の電話番号が判明し(この口座は中学時代に地元で作った)、実家に居た祖母上が役場の父上の番号を郵便局員に伝え、父上がシメジの職場と携帯の電話番号を伝え、そしてシメジに連絡が至った、という事らしい。

 ……ばあちゃん、一種の振り込め詐欺みたいな電話に、意外と冷静に対応したなぁ。

 それにしても、郵便局員の方には、非常に迷惑を掛けてしまった。後で郵便局にカネを取りに行った時、お礼とお詫びをしたが、こんな事ってそうそう頻繁にあるものでも無かろうから、申し訳無い思いだ。

 いやぁしかし、カネがちゃんと帰って来て良かった。



 そして、もう1つ思った事。

 心配掛けてるといけないので、郵便局と連絡が取れた直後、役場の父上にもTELしてみた。父上は、シメジの馬鹿さ加減に笑いながらも、気を付けろと父らしい事を言っていた。

 ……シラフの父上と話したのは、いつ以来だろう。