雨→長崎物語」の物語。「長崎は今日も雨だった」では無く、「雨→長崎物語」なのだ。

 シメジは、気が向いて時間的に余裕がある時は職場に弁当を持参して行く。それが無い時は、軽ワゴンで弁当を移動販売しているオバちゃんが事務所に立ち寄るので、そこから弁当を買う。それも無ければ、電話で注文する弁当屋の弁当になる。因みに、少人数の出張所であるから、社内食堂や売店などと云ったものは存在しない。

 今日は、朝から検査が入っていたので、移動販売のオバちゃんが訪ねて来る時間に事務所に居る事が出来なかった。更に、いつもの弁当屋は何故か臨時休業で、弁当を注文する事が出来なかった。

 昼食が無くなったシメジは、どっかで外食するか、コンビニかスーパーで何か買って来るか、一旦帰宅して何か作って食べるか、いずれにしても昼休みに外出する事を余儀なくされた。



 昼休みになり、同様に昼食が無かったH少尉と、降りしきる豪雨の中、シメジの愛車であるイプ公に向かう。一緒にどっかに食べに行こうか、との結論に至っていたのだ。しめしめ、もしかすると奢ってくれるかも。いや、甘い期待をするとロクな事が無い。

 イプ公を停めた駐車場に着く(本来の駐車場は現在工事が行われていて半分以上が使えなくなっており、シメジ等の下っ端は少し離れた空き地に停めているのだ)。イプ公を眺めやる。

 のおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!

 何と、イプ公が水没している。余りの豪雨で、空き地が水溜りになっているのだ。見ると、タイヤのホイールの部分まで水浸しだ。車がお釈迦になるほどの水量では無いが、とてもじゃ無いが近付けない。

 呆気に取られていると、少尉はそそくさと徒歩で何処かへ向かおうとしている。シメジを置いて、昼食へと歩き出している。くそッ、見捨てられてしまった。



 とても歩いて行く気になれなかった、と言うか昼食を喰う気にもなれなかったシメジ。それほどまでにショッキングな光景だったのだ。すごすごと事務所に戻り、深く溜め息をつく。

 もう、今日は昼食抜きでいいや。昨日の呑み会で胃が重く、食事抜きもかえって良いかも知れない。



 と思っていると、本日も呑み会だったと気付く。ヤバい、空きっ腹で酒を呑むと、これほど危険な事は無い。慌てて、所長が先日の出張で買って来た土産のお菓子「長崎物語」を2個ほど口に放り込む。

 嗚呼、虚しい昼食だ。



 呑み会の顛末は、↓にて。