さてさて、昨日の続き。


「密・リターンズ!」
 昨日の2作に比べるとかなり知名度が低いであろうから簡単に粗筋を書くと、「高校教師・端島密が死んで高校生・鳴神源五郎として転生し、元恋人・星崎理都と恋愛をやり直そうとするも正体は明かせず、そのうち様々なトラブルが舞い込んで来て、端島密に戻る儀式で何故か理都の方が転生してどっかの他人の身体に入ってしまうが、最終的には理都を探し出してハッピーエンド」とのストーリー。
 こちらは、連載当時に個人的な評価がかなりの変動を見せた作品。
 最初は、「絵が下手だなぁ」「死者蘇生のオカルティックなストーリーかぁ、何だ幽々白書のパクリかよ」と思っていたが、鶫原ちなみが登場した辺りで一転。彼女の真っ直ぐな想い(まぁ端緒は早とちり・勘違いなのだが)に、「おぉーッ、可愛いじゃん。現実に居たら引きそうだけど」と評価急上昇を見せた。そこから、密・理都・ちなみの三角関係でなかなか楽しませて貰い、死んだ事になっている自分自身がライバルという着眼点にも感心し、「単行本買ってみてもいーかなぁ」とまで思った(結局買わなかったが)。
 しかし、色男教師・烏丸有志が登場したことで、「あれれ、ヤバい方向に走り始めたぞ」と思い始め、源五郎から密に戻る転生術の儀式のくだりでダレて来て、理都探し&探偵物語の頃には完全に気持ちが離れてしまった。
 「ヤバい方向」の話は後にして、後半ダレて来てしまったのは、何だか当初の純愛モノと全く違う展開になってしまったから&どっかで見たパクリが多くなって来たから。端島密の身体に戻って「密リターンズだぜ!」とか言ってるから、或いはこちらが本筋と言うか書きたかったストーリーなのかも知れない。だがその表現の仕方が陳腐でどうにも世界に入りこめない。パクリなのかは判らないが、余りにもお決まりでいかにもマンガな挿話も多い(内気な僧・卯堂と強気なレディースのアタマ・昴子がくっ付くとか)。
 パクリと言えば、先に書いた「ヤバい方向」。烏丸が加わり四角関係になった時点で、「アレッ、これって『めぞん一刻』やん」と誰もが思ったことだろう(両作を知っていれば)。
 つまり、源五郎→五代、理都→響子、つぐみ→こずえ&八神、烏丸→三鷹、密→惣一郎。無力な高校生の源五郎と教師の理都では五代と響子くらいに釣り合っていないし、相応の恋愛対象&押しの強い女であるつぐみってのはこずえと八神を足して2で割って17引いたくらいのキャラクターだし、烏丸はまんま三鷹を薄っぺらにした感じだし。密の設定ってのは前述の通りなかなか面白いと思うが。うーん、何と言うか、こいつらのキャラクター掘り下げってのはそれなりに良いのだが、器となる人間関係が似通っているので、どうしても比較してしまうしその上で完敗してしまう。ついでに、周囲のキャラクターについては、四谷やら一の瀬夫人やらの強烈な個性がゴロゴロ居た「めぞん一刻」と比較しようも無い。
 うーん、この物語が「めぞん一刻」が発表されていない別世界で刊行されていたら、どうだろう。やはり、随所に出て来る「どっかで見た事ある」シーンの数々からして、その元手の作品と比較してしまうのだろうなぁ。完全なオリジナルはそうそう無いとは言え、やっぱパクリってのはそういう弊害が付き物だし(そもそもパクリ自体が良くないが)、しかも設定引用元が日本マンガ史に残る金字塔的な名著「めぞん一刻」だったりするとどうしても評価を下げるわな。あ、パクったと断言しているが、そうでは無い可能性も大いにあるのでこの辺にしとこ。
 とまぁ酷評めいたレビューになってしまったが、オレはこれでもそれなりに気に入ってはいるのだ。気に入っているからこそ、もう1回読もうという気になったし、レビューを書こうとまで思ったのだし。全8巻、一家にシリーズとは言えないが、一村に1シリーズくらいはあっても良いぞ。